船で帰る

昔、天津から船で帰国したことがあった。船の名前は鑑真号だったかな?

1泊か2泊か忘れたけど、とにかく船で。

その船が日本に近づいて、日本の海沿いの家や山が見えてきた時の感じは今でも思い出せる。もう20年くらい前の事だけど。きちんとした佇まいの家々。山々も茂り過ぎず、そこに収まっている、という印象。みんな町も村も人々もしっかりと元気に生きているけど、大声で叫びあっているのではない。人々のエネルギーがぶつかり合う中国の町を離れて、最初に見た日本が地方の小さな町や村だったので余計にそう思ったのかもしれない。

でも一定の速さで進む船の中からそんな風景を見て帰ってきたなぁ、としみじみ思った。たぶん船のルートを考えるとそれは山口の田舎の風景で、山陰生まれの私に親しみがある山の形や植生や町の姿だったからだろう。

飛行機でもなく車でもなく船の目線で帰国した。

それだけの話。