一ヶ月

東京生活も四週間が過ぎました。
故郷を離れてしまえばどこで生活するのもそんなに変わりが無くて、東京での生活もまぁこんなものでしょう、というくらいでなんとなく過ぎました。故郷とそれ以外、というくっきりした線引きがあります。 この間印象的だったのは、街の人々がとてもマナーを守ること。電車での乗り降りの際は、乗る人は降りてくる人が全部降りきるまで、たとえ降りる人が一人であってもきっちりと待ちます。街でも少し体が接触したら、ごめんなさい、すみません、と断ります。こういう面はとても礼儀正しい。人が多いからそうしないといけないんでしょうね。その代わり、それらの暗黙の了解が守れない人にはちょっと厳しそう。冷ややかな目や罵声が浴びせられます。私も商店街を自転車でウロウロしていたら、向かいから来たおじさんに「フラフラするな!」といわれました。あ、あと、燃えるゴミの日が週に三日もあります。
 仕事にはまぁ、慣れました。中国人に対する日本語教育が仕事の内容です。東京には大阪以上に中国人が多くて、そこかしこから中国語が聞こえてきます。街の飲食店で働くバイトは中国系の人が多くて、一生懸命働く中国系の人の姿が学校で一生懸命勉強している学生の姿に重なって、ラーメン屋で一人ジーンとしたりしています。
先日赤羽の中華料理屋に行ったときのこと。案内の女の子が「ナカホドウゾー!」と叫びます。聞き間違いかと思いましたが、やっぱり他の店員も一緒に、人が来るたびに「ナカホドウゾ〜!」。いろいろ考えましたが、これは「中ほどへどうぞ」を短縮してしまったに違いありません。お客の若い日本人達がクスクス笑っています。ほんの数日の教師生活ですが、「正しい言い方を教える」ことが身体化していた私は(なんか嫌な感じですが)会計のときにこっそり正しい言い方を教えてあげました。よろこばれました。
ああ、週末。一人で発泡酒を飲んで消音駒をはめた三線を弾いています。明日は洗濯機と電子レンジを買いに行き、(しかし、一人暮らしというのは、本当に無駄が多い。一人に一台冷蔵庫とか、洗濯機とか、必要か!?無駄すぎる!寮生活の効率の良さを学ぶべきだ。これからはきっと寮のような形態で知り合いで無い人々が住むスタイルがどんどん増えていくと思う。)家賃を振り込み、図書館でカードを作って『続・氷点』を借り、秋葉原にマニアの踊りを見に行き、余裕があれば都電荒川線(東京唯一の路面電車)に乗って路上で売っている古本を買いに行った後、もんじゃ焼きを食べます。