システムとインタラクション

定延利之『よくわかる言語学アルク より

例えば今、私の前に蛸の切り身があり、大根の切れ端があるとします。私が蛸を食べようが捨てようが、横の大根は影響を受けません。この「蛸と大根」はシステムではありません。(略)ところが私がこの蛸と大根を同じ鍋に入れて煮たとします。すると、煮られた蛸の味が大根にしみます。大根は、もともと煮られて大根の味が出来ているところへ蛸の味がしみてくるので、両者が混ざって化学反応を起こして(この際そう考えておいてください)、独特の味Aになります。それがまた蛸にしみます。蛸も蛸で本来の煮られた蛸味のところへ、この独特の味Aがしみてくるので、先ほどの大根の化学反応とは又微妙に違った化学反応を起こして、独特の味Bになります。その味Bがまた大根に染みて大根は独特の味Cになり、そのCが蛸に染みて、蛸はDになり・・・という具合になるとき、「蛸と大根」は一つのシステムと言えます。(略)蛸と大根がお互いに、どんどん新しい影響を与え合い続けるという、部分同士のインタラクション(相互作用)が無視できなくなるからです。部分同士のインタラクションが無視できなくなり、全体が要素の総和と考えられなくなったとき、その全体をシステムというわけです。

おでんが食べたくなる言語学の本。励みになることを期待し、本にサインして頂きました♪