島のあきちゃん

何年も前、フェリーで数時間の島に一人で旅行に行った。

たまたま島のイベントの日で、島の人たちが小さな集会所に集まって、フリーマーケットやパン屋やハンドマッサージなど自分たちでお店を出して楽しんでいた。みんな顔見知りみたいで、一人でふらっと訪れた私は「誰かしら?」と思われてる気配を感じながら、このよそ者感も旅ならでは、と楽しんでいた。

去年島に嫁いできたというお洒落なお姉さんのお店でジュースを買って、ひさしの下に座って様子を眺めていたら、さっきから店をウロウロしていたちょっと気の強そうな小学生の女の子が「あき~!」と言って男の子にまとわりついた。

大学生くらいの青年。女の子以外にも島の色んな人たちが、彼を見つけて声をかけていた。普段は島を離れていて、たまたま帰ってきてる子なのかな。古着みたいなTシャツでちょっとあか抜けていて、でも知り合いに見せる気楽な笑顔でニコニコしている青年。みんなが小さなころからの彼のエピソードを知っていて可愛がられているんだろう。生意気な女の子も一緒に遊んでくれる彼のことが大好きなんだろう。

私のいない場所の、私に関係ない人々の親しい空間。

今となってはまったく顔も覚えていないけど、なぜか時々この「あき!」と呼ばれる青年と生意気そうな女の子と地元の人だけのお祭りの雰囲気を思い出す。